「会議が終わったあと、議事録をまとめるだけで1時間かかる」「お客様へのお詫びメールの言い回しに悩んで、なかなか送れない」。中小企業では、こうした文章づくりの仕事が、本来の業務の合間に少しずつ積み重なっています。一つひとつは小さな作業でも、毎週くり返すと大きな時間になります。そこで役立つのが、ChatGPTやGemini、Claudeといった生成AIです。この記事では、議事録とメールの作成にAIを使う具体的な手順と、頼み方の例、守るべき注意点、社内に広げるコツまでを、AIをこれから業務に取り入れたい方向けに解説します。

議事録とメールがAIと相性がよい理由

AIを業務に取り入れるとき、最初の候補として議事録とメールを挙げる会社は少なくありません。それには、はっきりとした理由があります。

1. 材料はそろっていて、「整える」作業が中心だから

議事録なら会議で話された内容、メールなら伝えたい用件が、すでに手元にあります。人が時間を使っているのは、情報を集めることではなく、それを読みやすい形に並べ替え、言葉を選ぶ部分です。AIは、渡された材料を整理し、文章の形に整える作業が得意なので、時間の短縮につながりやすいのです。

2. 毎週くり返し発生するから

定例会議や取引先とのやり取りは、毎週のように発生します。1回あたりの短縮は数十分でも、くり返すほど効果は積み上がります。効果を実感しやすいことは、社内でAIを広げるうえでも大切なポイントです。

3. 最終確認を人が行う前提にしやすいから

議事録もメールも、作ったあとに人が読み返してから共有・送信する流れが、もともとあります。AIの文章には誤りが混じることがあるため、「AIが下書き、人が確認」という役割分担を自然に組み込める業務は、最初の一歩として安全です。

AIで議事録を作る4つのステップ

ステップ1:会議を録音し、文字起こしをする

まずは会議の内容をテキストにします。オンライン会議なら、多くの会議ツールに録画や文字起こしの機能があります。対面の会議なら、スマートフォンやICレコーダーで録音し、文字起こしのアプリやサービスを使ってテキストにします。録音を始める前に、参加者全員に録音とAIでの議事録作成について伝え、了承を得ることを忘れないでください。社外の方が参加する会議では特に大切です。

ステップ2:AIに「議事録の形」を指定して整理させる

文字起こしのテキストは、話し言葉のままで、話題も行ったり来たりしています。これをAIに渡し、議事録の形に整えてもらいます。ポイントは、どんな項目で、どんな形にまとめてほしいかを具体的に指定することです。たとえば、次のように頼みます。

  • 会議名・日付・参加者を冒頭に書く
  • 議題ごとに、話し合った内容を3行以内で要約する
  • 「決定事項」と「保留・検討中の事項」を分けて書く
  • ToDoは「誰が・何を・いつまでに」の形で箇条書きにする
  • 発言の中で数字や日付が出てきた箇所は、そのまま残す

この指定を毎回書くのは手間なので、自社の議事録の型として文章にまとめ、社内で共有しておくと便利です。

ステップ3:人が確認し、足りない部分を補う

AIが整えた議事録は、会議に出ていた人が必ず読み返します。特に確認したいのは、決定事項が正しいか、ToDoの担当者と期限が合っているか、数字や固有名詞に聞き間違い・変換ミスがないか、の3点です。文字起こしの段階で専門用語や人名が誤って変換されることはよくあるため、AIの要約がそのまま正しいとは限りません。

ステップ4:共有し、ToDoを追いかける

確認した議事録は、社内のチャットや共有フォルダなど、決まった場所に保存します。保存場所がばらばらだと、あとで探せません。ToDoは議事録に書いて終わりにせず、次の会議の冒頭で進み具合を確認する流れにすると、会議そのものの質も上がっていきます。

AIでメールを作る使い方

メールは、議事録以上に毎日発生する文章です。AIに頼むときの基本は、伝えたい要点を箇条書きで渡し、相手・目的・トーンを指定することです。「丁寧なメールを書いて」とだけ頼むと、一般的で中身の薄い文章になりがちです。

返信メールの下書き

相手から届いたメールの要点と、こちらの回答(「日程はA案で了承」「見積もりは来週水曜までに送る」など)を箇条書きで渡し、返信の下書きを作ってもらいます。言い回しに悩む時間がなくなり、確認と微調整だけで送れる状態になります。

お詫び・お断りのメール

納期の遅れへのお詫びや、依頼をお断りするメールは、言葉選びに気をつかう分、時間がかかります。事実関係、こちらの対応、今後の再発防止策を箇条書きで渡し、「誠実で、言い訳がましくないトーンで」と指定すると、たたき台を短時間で作れます。ただし、お詫びの内容や約束する対応は、必ず責任者が確認してください。

長いメールの要約と、英文メール

長文のメールや、やり取りが続いたスレッドを要約させ、「相手が求めていること」と「こちらが返答すべきこと」を抜き出してもらう使い方も便利です。海外の取引先とのやり取りがある会社では、日本語で書いた要点を英文メールにしてもらう、届いた英文を日本語で要約してもらう、といった使い方もできます。

業務別|AIへの頼み方の例

業務AIに渡す情報指示の例人が確認すること
定例会議の議事録文字起こしのテキスト決定事項・保留事項・ToDo(誰が・何を・いつまでに)に分けて整理して決定事項と担当者・期限、数字や人名の誤り
商談の記録商談メモや録音の文字起こしお客様の課題・要望・予算感・次回の約束を項目ごとにまとめてお客様の発言の意図、社外に出せない情報の扱い
返信メール受信メールの要点と、こちらの回答取引先向けに、簡潔で丁寧な返信を書いて日程・金額・約束の内容
お詫びメール事実関係・対応・再発防止策誠実で言い訳がましくないトーンで、お詫びのメールを書いて責任の範囲、約束する対応が実行できるか
社内への周知決まったことと、社員にしてほしいこと全社員向けに、要点を3つにまとめたお知らせ文を書いて実施日や対象者、問い合わせ先

失敗しないための注意点

議事録とメールは、会社の内部情報やお客様の情報を多く含みます。便利だからといって何でも入力してよいわけではありません。少なくとも、次の点は社内で決めてから使い始めましょう。

入力してはいけない情報を決める

顧客の氏名・連絡先などの個人情報、未公開の売上や取引条件、契約の内容などは、使っているAIサービスのデータの扱いを確認するまで入力しないのが原則です。どうしても使いたい場合は、会社名や人名を「A社」「担当者B」のように置き換えてから入力するだけでも、リスクを下げられます。また、個人の無料アカウントではなく、会社として契約・管理しているアカウントを使うよう決めておくと安心です。

録音と議事録作成は同意を取る

録音やAIでの文字起こしは、参加者にとって気持ちのよいものとは限りません。社内会議でも事前に伝え、社外の方が参加する場合は必ず了承を得てから録音します。録音データの保存期間や削除のルールも、あわせて決めておきましょう。

AIの文章をそのまま送らない

AIは、もっともらしい文章の中に、事実と違う内容や、話していない約束を混ぜてしまうことがあります。社外に出る文章は、送信ボタンを押す前に、必ず人が全文を読むことをルールにしてください。宛先、日付、金額、固有名詞は特に念入りに確認します。

「自分の言葉」を少し足す

AIの文章は整っている反面、誰が書いても同じような印象になりがちです。長くお付き合いのある取引先へのメールなら、最後に一言、相手との具体的なやり取りに触れた言葉を足すだけで、受け取る側の印象は大きく変わります。

社内に広げるコツ

1人の社員がAIを使いこなしていても、会社全体の時短にはつながりません。社内に広げるには、次の3つが効果的です。

  1. 指示文をテンプレートにして共有する:議事録の型、返信メールの頼み方など、うまくいった指示文を社内の決まった場所に集めておきます。新しく使う人も、コピーして使うだけで同じ品質の下書きが作れます。
  2. 使う前と後で時間を比べる:議事録1本、メール1通にかかっていた時間を、導入前後で記録します。「何分短くなったか」が見えると、社内で使う理由がはっきりします。
  3. 失敗例も共有する:人名の誤変換や、AIが話を補ってしまった例なども共有しておくと、確認すべきポイントが社内にそろっていきます。

AI導入全体の進め方や、社内に定着させるポイントは、中小企業のAI導入は何から?AI顧問を使った進め方で詳しく解説しています。

始める前のチェックリスト

  • 最初にAIを使う業務(定例会議の議事録、返信メールなど)を1つに絞ったか
  • 会社として使うAIサービスとアカウントを決めたか
  • 入力してはいけない情報と、置き換えのルールを決めたか
  • 録音するときに参加者の同意を取る流れを決めたか
  • AIの文章を人が確認してから共有・送信するルールを決めたか
  • 議事録の型や指示文のテンプレートを、共有する場所を決めたか
  • 導入前の作業時間を記録したか

Buzzryのサポート

議事録やメールの下書きでAIの手応えを感じたら、次は「毎回同じ指示を出している作業」を仕組みにする段階です。たとえば、商談の記録をAIが整理して顧客管理の画面に自動で登録する、日報の内容から週次の報告文を自動で作る、といった形で、普段使っている業務の流れにAIを組み込むことができます。

BuzzryのAI事業では、社内でのAI活用に継続的に伴走する「AI顧問」と、Excelや紙で回している業務をシステムにする「社内システム無料開発」(初回1件の開発費0円、完成したシステムを実績として公開させていただくことが条件。公開後の保守・運用は月額プラン)を提供しています。「どの業務からAIを使えばいいか」「この使い方で情報の扱いは大丈夫か」といったご相談からお受けしています。詳しくはAI事業のページをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。